天安門事件30周年、日本政府と米政府の対応に違い:Viewpoint

投稿日 :2019年6月8日

天安門事件30周年、日本政府と米政府の対応に違い | オピニオンの「ビューポイント」
https://vpoint.jp/world/china/137934.html
2019/6/07(金)

 6月4日、天安門事件から30周年を迎えた。この日を前後して各国メディアが天安門事件に関して特集を組み、中国政府の人権弾圧を追及することで足並みをそろえる中、政府の間では対応に違いが見られた。それがアメリカと日本だ。

 米トランプ政権は天安門事件について中国政府を真っ向から批判している。米国務省は3日、天安門事件30周年に合わせてマイク・ポンぺオ長官の名前で中国政府を批判する声明を発表した。同長官は「天安門の母たちを含め、「愛する人々を失い未だ悲しんでいる家族に遺憾の意を表する」と述べ、「民主主義と人権、汚職の終わりを求めた平和的なデモを暴力的に抑圧した」と強く批判した。また「その後数十年間米国は中国がよりオープンで寛容な社会になると期待してきたが、それらの望みは打ち砕かれた」とし、同長官は中国政府を名指しで、天安門事件を犠牲者数と行方不明者数を公表するよう求めた。また同長官は新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する弾圧に対しても言及した。「組織的にウイグル文化を抑えつけ、イスラム教信仰を撲滅しようとしている」として強い言葉で非難している。

 また5月30日の米CNBCの報道で、マイク・ペンス副大統領が今月中旬に中国政府に対して宗教・人権弾圧を非難する予定だと報じている。ペンス氏は昨年10月、シンクタンクのハドソン研究所で行った演説で中国による言論統制や人権弾圧、南シナ海の軍事基地化などを厳しく非難したことで大きな話題となった。こうしたポンぺオ氏やペンス氏の発言からこれまで続いてきた米国の対中政策を、トランプ政権が大きく転換するという政権のはっきりとした意思表示が見受けられる。

 一方で日本政府は、今回天安門事件については直接的に中国への批判を避けた。菅官房長官は4日の記者会見で武力弾圧や虐殺はあったのかとの記者の質問に対して、当時の官房長官談話を取り上げ、「軍の実力行使による衝突の結果、多くの人命が失われるという痛ましい事態に至ったことは誠に遺憾であると言わざるを得ないと受けとめている」と述べるにとどめ、直接の批判は避けた。

 河野外務大臣も4日の記者会見で、記者の質問に、「自由とか基本的人権、あるいは法の支配といったものは、国際的に共有されるべき価値観だと思っている」と述べるに留め、日本政府から天安門事件30周年に対して特別に中国政府に糾弾することはなかった。

 貿易戦争が過熱する中で、アメリカ政府が中国批判を強める一方、日本政府は中国政府との関係改善を模索している。対中批判を抑制する配慮した姿勢が伺えるが、中国が人権侵害をなお続けている事実を直視していないように見受けられる。

 香港や台湾、韓国など各地でも抗議集会や犠牲者を追悼する集会が行われた。時事通信に依ると香港では主催者発表で18万人、警察発表で3万7千人が集まる大規模なデモが行われた。日本でも東京の中国大使館前では在日中国人ら約40人が集まり、警察による厳重な警戒の中でシュプレヒコールを上げていた。

 今回の抗議デモを主催した日本天安門事件実行委員会の王戴代表は「(日本政府は)対中政策を変えない限り、中国共産党政権は覇権主義に走る」と述べ、「独裁政権に『ノー』と言えるよう、日本も米国と同じく方針転換しなければ」と訴えた。トランプ政権の対中政策と比較すると、王氏が言うように日本の対中政策は不鮮明な点が多い。日本政府の強い対応が求められる。