中国、ネットなど言論を封じ込め―天安門事件25周年控え ウォール・ストリート・ジャーナル

投稿日 :2014年6月4日

2014 年 6 月 3 日 10:09 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303335604579600911781875516

 【北京】中国指導部は今週の天安門広場事件25周年を前に政府批判の動きを事実上封じ込めており、反体制派に対する広範な取り締まりに乗り出した。特に弁護士、人権活動家、ジャーナリストなどが対象となっている。

 人権グループによると、25周年の記念式典を開催させないように中国当局が動いており、数十人が拘束されたり、事情聴取されたり、自宅に軟禁されたりしたという。人権団体「維権網」は、「拘束されたり、姿を消したり、召喚されたりした人」の数を50人としている。

 北京では日ごろ厳重な警備が3、4両日の記念日を前に一段と強化された。その他の都市で相次ぐテロ攻撃が発生したことも受けた動きだ。

 「彼らはあらゆるところで人々を捕まえている」と、人権弁護士の劉士輝氏は言う。同氏は上海当局に10日間以上拘束され、故郷の内モンゴルに先月移送された。同氏によると、今回の取り締まりは、「アラブの春」といわれた2011年の中東の民主化運動の際、中国への波及を阻止するために着手された本格的な取り締まり以降で最大規模だという。

 政府は天安門事件に絡んだ活動に関してコメントすることは稀で、活動家の拘束、あるいは一部メディアやインターネットサービスの遮断についてコメントしていない。

 中国当局による検閲を監視しているGreatFire org.によると、中国当局は天安門事件記念日を控えて、検索からGmailまで米検索大手グーグルの使用を広範にわたって阻止し始めた。グーグルやその他ネットサービスのこの種の遮断は、中国では政治的に微妙な記念日が近づくとごく普通にみられる。グーグルがウェブサイト上に掲げた利用頻度の報告では、中国のサービス利用の減少は今月1日から始まったという。

 グーグルの広報担当者は「われわれは広範にチェックしており、われわれの側には技術的な問題は一切ない」と述べた。

 人権活動家によれば、当局はまた、反政府分子や活動家を拘束するため罪状を挙げるケースが多くなっており、量刑が科される恐れがあるとの懸念が高まっている。これまでは、記念日を過ぎると拘束された活動家は通常釈放されていた。

 香港中文大学の中国法と人権の専門家、エヴァ・ピルス氏は「それは、全体的な雰囲気が流動的で緊張していると当局が自覚していることの反映だ」と述べた。そして、刑法の運用は、反政府分子は容認しないと当局がこれまで以上にはっきり伝える手法だと語った。

 最近の反政府分子の取り締まりは、近年よりも厳しくなっているようで、共産党による全体的な掌握強化の動きと呼応している。共産党は、習近平氏が18カ月前に党トップである総書記に就任して以降、社会、当局者、インターネット、その他の分野に対する取り締まりを強化してきた。

 北京指導部は、情報管理を強化しており、外国メディアは厳しい詮索を受けるようになっている。北京にある中国外国人記者クラブは、天安門事件25周年を控えて当局が「いじめや脅迫」を強めていると批判した。具体的には一部のリポーターに記念日関係取材をやめるよう警察が指示したり、政府に従わないと重大な結果を招くと警告したりしているという。

 例えば、日本経済新聞の助手として働いていた中国人のXin Jian氏は、中国南西部で拘束されたが、拘束の状況に関する詳細はほとんど提供されていない。 

 またウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)を含む一部の国際メディアの中国語ウェブサイトは、中国本土で阻止されているが、当局は理由を一切説明していない。WSJを発行しているダウ・ジョーンズ&Co.は、同紙サイトが先月31日以降、阻止されていることを確認したが、詳細は明かさなかった。